戦国時代の中国は、まるでチェスのような国々の駆け引きが常に行われました。
特に有名なのが、孫臏（そんぴん）と龐涓（ほうけん）という二人の戦略家の対決です。
彼らは一時は友人でしたが、後に違う国に属し壮絶な戦いを繰り広げました。
この記事で、彼らの壮大なストーリーとそれがどのように展開されたのかを紐解きます。
目次
出生と時代背景 – 孫臏と龐涓、戦国時代とは？光と影
孫臏（そんぴん）と龐涓（ほうけん）、二人は古代中国戦国時代に生まれました。紀元前4世紀ごろの話です。
この時代は、多くの国が戦いを繰り広げていた非常に厳しい時代です。
孫臏は伝説的な軍事思想家、孫武の子孫として知られ、彼の知恵は幼い頃から注目されていました。
一方、龐涓は孫臏と同じく戦略に長けた才能を持っており、二人は学生として同じ師から学ぶ仲間でした。
しかし、学ぶうちに二人の間には競争が生まれ、この競争がやがて深い亀裂へと発展していきます。
戦国時代は、中国史上最も混乱と争いが絶えなかった時期で、春秋の時代を含めると数百年間以上続きました。
ある程度統合された戦国時代には、七つの強国があり：齊（せい）、楚（そ）、燕（えん）、韓（かん）、趙（ちょう）、魏（ぎ）、秦（しん）といいます。
これらの国々は、それぞれが中国の支配を目指して互いに戦いました。
政治的には各国が独自の戦略を駆使して勢力を拡大しようとし、経済的には農業の発展や商業の成長が見られましたが、一方で常に戦争の脅威がありました。
この時代の特徴は、ただ争うだけでなく、政治的な策略や外交を重視した点にあります。
例えば、秦は統一を目指して他国との同盟や戦争を巧みに操りました。
また、文化的には「百家争鳴」と呼ばれる多様な思想が花開き、孔子や孫子などの思想家が登場し、後の中国文化に大きな影響を与えた時代でもあります。
このように戦国時代は、危険とチャンスが共存する、非常にダイナミックな時代だったのです。
生涯と成就 – 孫臏と龐涓、知略の道を歩む
孫臏は紀元前4世紀初め、斉の国で生まれます。
彼は「孫子」として知られる孫武の子孫であるといわれ、その血筋から受け継いだ軍事戦略の才能がありました。
孫臏は若い頃から同じ学校で龐涓と学んでいましたが、龐涓は孫臏の才能を羨ましく思い、次第に孫臏を競争相手と見るようになります。
龐涓が孫臏の才能に嫉妬する一方で、孫臏は自分の才能をさらに磨いていましたが、先に出世したのは龐涓で彼は大国「魏」の軍人指導者の立場にまで出世します。
龐涓は孫臏がどこかの国で出世したら、のち自身の立場を脅かすことを恐れます。
そこで龐涓は魏国に孫臏を招き一計、孫臏に無実の罪を着せたのです。
結果、孫臏は両足を切断され顔に入れ墨を入れられるという障害を負いましたが、一命をとりとめて魏国を脱出することに成功しました。
この出来事により二人は今後敵対関係となっていくのです。
逸話と後世の評価 – 孫臏と龐涓の知略戦
孫臏斉に仕える
孫臏が斉の国に仕えるようになったのは、彼の才能が田忌という将軍に認められたからです。
田忌は斉の王と賭け競馬をしていましたが、何度も負け続けていました。
ある日、田忌は孫臏の戦略的な思考を利用して勝つ方法を考え出しました。
孫臏は田忌に、自分の馬をうまく使い分けるべきだと提案します。
具体的には、自分の一番速い馬を王の二番目に速い馬と競走させ、二番目に速い馬を王の三番目に速い馬と競走させ、そして三番目に速い馬を王の一番速い馬と競走させるのです。
この戦略により、田忌は最終的に競馬で勝利を収めました。
この賢い策略が斉の王の目に留まり、孫臏の評判は一気に高まりました。
孫臏の才能を高く評価した斉の王は、彼を自分の国で働かせることを決定し、孫臏は斉の国の軍事顧問としての地位を得ることができたのです。
この出来事が、孫臏が斉に仕えるようになるきっかけとなりました。
桂陵の戦い：故事「囲魏救趙」
桂陵の戦いは、孫臏の才能が最も光った戦いの一つであり、古代中国の軍事戦術「囲魏救趙」（いぎきゅうちょう）の故事で有名です。
この戦略は、敵を欺いて彼らの注意をそらし、最終的に大きな勝利を収める方法となります。
この戦いの背景には、魏国が趙国を攻撃し、趙国が非常に苦しい状況に立たされていたことがあります。
そこで趙国は同盟国である斉国に援軍を求めました。
孫臏は斉国の軍師としてこの要請に応じましたが、彼は直接趙を救うのではなく、まず魏国本土を攻めるという大胆な計画を立てます。
孫臏の戦略は、まず自軍の一部を使って魏軍と小さな戦いを何度か行い、故意に負けることで魏の将軍龐涓を油断させることでした。
これにより龐涓は斉軍を侮り、その防御を軽視するようになります。
その後、孫臏は自軍の精鋭部隊を率いて、予期せぬ方向から魏国本土に迅速に進攻しました。
この奇襲戦法は完全に成功し、魏国は斉軍の進行に気づいた時にはすでに手遅れ。
龐涓は慌てて兵を引き返しましたが、孫臏の待ち構える罠にはまり、斉軍の手によって大敗を喫するのです。
この戦いの結果、孫臏はただの軍師ではなく、戦略的な天才であることを証明しました。
また、「囲魏救趙」の戦術は、直接的な力に頼るのではなく、心理戦と状況判断、また敵軍を分散させてからの各個撃破の重要性を教えています。
馬陵の戦い：孫臏の戦略的勝利
馬陵の戦いは、孫臏が再び龐涓を破る戦術の妙を見せつけた壮絶な戦闘でした。この戦いは珪陵の戦いの数年後に行われ、孫臏の知略が再び光を放つことになります。
孫臏は魏軍が自分たちのキャンプを観察していることを知っていました。
そこで彼は独特な策略を用い、自軍のキャンプでの煮炊きに使う火の数をわざと日々減らしていきます。
この変化を見た龐涓は、斉軍の多くの兵士が脱走していると勘違いし、斉軍が弱体化していると判断しました。
孫臏の計算通り、龐涓はこの情報に乗じて斉軍を一気に討ち取る決断を下し、その軍を馬陵という狭い山間部へと誘い込みました。
これは孫臏が仕掛けた罠で、事前にその地に多数の鉄の杭を隠し、魏軍が深入りすると突如として現れた障害物によって魏軍の進軍が妨げます。
さらにこの瞬間、孫臏は高地から魏軍に向けて矢の雨を浴びせ、魏軍は動けなくなった状態で大打撃を受けました。
龐涓はこの絶体絶命の状況で、自分が孫臏の計略に完全にはまったことを悟り、彼の才能を認めつつも、自らの不覚を嘆きました。「やはりこうなったか！孫臏に名を上げさせるとは不覚だ。」と悔やみながら、龐涓は自害し果てるのです。
歴史における彼らの評価：知略と人間性
孫臏と龐涓は中国歴史上、その知略で高く評価されています。
孫臏は戦略的な天才として、彼の独創的な戦術が多くの戦いで成功を収めました。
一方、龐涓も優れた戦略家でしたが、彼の嫉妬心が彼自身の下落を招くことになります。
二人の人間性は対照的で、孫臏は逆境にも屈せず、困難を乗り越える強さを持っていたのに対し、龐涓は孫臏に対する嫉妬から自己破壊的な選択をしてしまいます。歴史は龐涓を教訓の一例として評価していますね。
私の評価と記事の総括
孫臏と龐涓の物語は、ただの戦術以上の深い教訓を私たちに教えてくれます。
孫臏の逆境を乗り越えた精神力と、龐涓の教訓から、私たちはどのように挑戦に立ち向かい、自己の限界を超えるかを学べます。
この話は、困難に直面したときの対処法を探求するきっかけとなるでしょう。